たなちの備忘録

自分の知識をストックしていくためのブログ

脳のパフォーマンスを高める脂質の基礎知識

スポンサーリンク

f:id:chi_tana:20170716123900j:plain:w500

脳のおよそ60%は脂肪でできています。CMでは糖分や脂肪が悪者にされていますが、脂肪は健康的な食生活の大切な要素の一つです。今回は、脳の働きを良くするという観点から良い脂質をとるために何を食べるべきか(何を食べてはいけないのか)をまとめていきます。

こちらの本の内容を要約しているので、専門用語が多く登場しますがご了承ください。全部読んでいただいても嬉しいのですが、目次を見て興味のある箇所から読んでもらって構いません。

ブレイン・バイブル

ブレイン・バイブル

良質な脂質を摂取しないと脳の働きが低下する

摂取するオメガ3とオメガ6の割合が大切で、現代の食生活ではオメガ6を取りすぎてしまう傾向があり問題となっています。 オメガ3の一種である(ドコサヘキサエン酸)DHAは細胞膜を柔軟に保ち、神経可塑性に不可欠な要素です。逆に飽和脂肪は細胞膜を硬くして神経可塑性に必要な脳の能力を損ないます。柔軟性のある膜は、受容体の形によって変わることができるので神経伝達物質が鍵穴のようにはまり、その結果ニューロンの発火が起きます。しかし飽和脂肪とトランス脂肪酸の摂取によって受容体が硬くなると、結果的にニューロンの相互作用が阻害されます。そうなると脳がニューロン間に情報を伝達できなくなり、明晰な思考ができなくなります。

摂るべき脂質:オメガ3

DHAとセロトニン

セロトニンは、幸せホルモンとも呼ばれるホルモンで精神を安定させる役割をもっています。DHAとセロトニン値には大きな関係があり、DHAはトリプトファンのセロトニンへの変換を促す役割をもっています。また、DHAはシナプスを作ることにも使われ、それによりさらにセロトニンを生成しポジティブな気分を維持するために重要な役割をもっています。

DHAを含む食品

DHAを豊富に含む食品は、サケ、鯖、イワシ、ニシン、アンチョビ。

EPA(エイコサペンタエン酸)

こちらもオメガ3脂肪酸の一つです。セロトニンやドーパミン等の神経伝達物質と関わり、気分の調整に役立ちます。また、脳の血流を良くしたり血液の活動に影響するエイコサノイドと呼ばれるメッセンジャーの流れを良くします。EPAはDHAと同じ食品に含まれています。

オメガ3が認知症を防ぐ

オメガ3は過度のアラキドン酸(AA)が細胞組織に蓄積するのを防ぐことができます。AAとは、不飽和脂肪酸の一つで炎症性の高い様々な物質の前駆体として働きます。牛豚鳥などの動物性の脂肪をとると増え、中高年の方がAAを取りすぎてしまうと認知症を発症するリスクが40%以上高まります。DHAはAAに効力があるため、認知力低下やアルツハイマー病を防ぐ可能性のあるものとして考えられています。

オメガ3は記憶と学習に不可欠

オメガ3は「脳由来神経栄養因子(BDNF)」を高める働きがあります。BDNFとはタンパク質の一種で、ニューロン新生と神経可塑性に重要な役割を果たし脳細胞にとって栄養剤のような働きをします。このBDNFは記憶と学習に不可欠な要素です。

オメガ3が含まれる食品

オメガ3は、サケ、鯖、ニシン、イワシや亜麻仁、くるみ、ひまわりの種、大豆、アーモンド、ひよこ豆、小麦胚芽、ふすまに含まれます。

コレステロールについて

コレステロールには善玉と悪玉の2種類があります。 HDL(高比重リポタンパク)型が善玉コレステロール、LDL(低比重リポタンパク)型が悪玉コレステロールです。

なぜ善玉、悪玉と呼ばれるのか

LDL型が悪玉コレステロールと呼ばれる理由は、動脈壁にくっつき脳血管障害を起こすからです。それに対してHDL型が善玉コレステロールと呼ばれる理由は、体内のコレステロールを肝臓に戻して処理し動脈壁につくのを防ぐからです。 悪玉コレステロールが多いと、脳への血流が弱くなり高齢者の認知能力を低くしてしまいます。血流が悪くなると動脈硬化を起こすため、脳卒中と心臓発作のリスクが高まります。脳卒中にならなくても、LDLコレステロール値の高さが原因となって起こるアテローム性動脈硬化は脳を損傷し知力を衰えさせます。

キャノーラ油・アボガド油・オリーブ油を増やす

これらの油に含まれる一価不飽和脂肪酸は、悪玉コレステロールを減らし善玉コレステロールは維持させる働きがあります。

避けるべき脂質:トランス脂肪酸

良質な脂質を不健康なものに変えてしまう

トランス脂肪酸は良い脂肪を悪い脂肪に変えるという特徴を持っていて、トランス脂肪酸のレベルが高いとDHAがオメガ6のドコサペンタエン酸という不健康な油に変わります。また、トランス脂肪酸が上昇するとオメガ3のALA値が下がりトランス脂肪酸が脳に吸収される量が倍増します。

さらに、次の方法によりトランス脂肪酸は脳を鈍くします。 トランス脂肪酸は神経細胞膜に吸収されて細胞を硬くし、脳細胞膜の通常の機能を阻害する場合があります。また、ドーパミンのような神経伝達物質の合成を変えて脳への血流を阻害します。これにより体がDHAのような必須脂肪酸を作る機能をブロックし、悪玉コレステロールが増え、善玉コレステロールが減ります。 血管の老人斑やトリグリセリドを増やし、血液の動きを不活発にして脳への酸素の供給を減らします。

マーガリン、ショートニングが含まれる食品は避ける

トランス脂肪酸が含まれる一般的な食品は、マーガリン、ショートニング、ポテトチップス、マヨネーズ等があります。

用語

  • 神経可塑性とは

新しい言語を覚えたり新しい考え方ができるようになったりするときに、脳の構造に変化がおきます。これが神経可塑性のざっくりとした意味です。

細かい説明をすると、脳には「ニューロン(灰白質)」と呼ばれる1000億個の神経細胞があり、各ニューロンは約1万の他のニューロンと繋がりを作り保ちます。ニューロン間のコミュニケーションは「シナプス」という隙間を通して行われます。新しいことを学ぶときにシナプスに変化がおきるのですが、このような変化がおきることを神経可塑性や、シナプス可塑性と呼びます。

  • 老人斑とは

アルツハイマー病などに大きく影響のあるたんぱく質です。脳の神経細胞から作られるたんぱく質が、ベータアミロイドというたんぱく質に変性して出来ます。

  • トリグリセリドとは

血中に含まれる脂肪の一種です。食べ物を摂取すると必要のないカロリーがトリグリセリドに変換され、食事と食事の間にホルモンがエネルギーのためにトリグリセリドを放出します。しかし、消費する以上の過剰なカロリーを摂取するとトリグリセリド値が上昇し、うつの悪化を含む健康問題が引き起こされます。逆にトリグリセリド値が低下すると、うつが軽減されます。

脂質の種類

名前が覚えられないので登場したやつをtree構造にしてみました。

脂質
├── 飽和脂肪酸
└── 不飽和脂肪酸
    ├── 一価不飽和脂肪酸
    |    └── オメガ9
    ├── 多価不飽和脂肪酸
    |    ├── オメガ3(n-3系)
    |    |    ├── DHA
    |    |    └── EPA
    |    └── オメガ6(n-6系)
    |         └── AA(アラキドン酸)
    └── トランス脂肪酸